「根性」に逃げない。
突き詰めるとこれが本書の伝えようとしているメッセージであり、仕事で成果を出すための鉄則である。
とりあえず取り掛かるではなく、「イシューからはじめる」とはどういうことなのか。まとめると以下の3つになる。
- 生産性はアウトプット/インプットである
- アウトプットはイシュー度✖︎解の深さである
- バリューの高い仕事をするにはイシューを見極めることから始めるべきだ
活力のある人にとって、「根性」に逃げることは、返って簡単なことなのかもしれない。しかしながら、そのアプローチでバリューの高い仕事を達成するには途方もない年月が必要になる。
あなたはもしかしてとても優秀である程度の成果をあげるかもしれないが、最も生産性の高い人と比べて大きな差を感じるだろう。
もし、最短距離でバリューの高い仕事を見つける方法があるとしたら、あなたの人生を変えるかもしれない。
「イシューからはじめる」それだけでいいのだから。
効果的な人になるための本である『イシューからはじめよ』の概要まとめ
そもそも、「イシューからはじめよ」という本は、仕事において成果をあげるための方法が書かれた本だ。
しかしながら、この考え方は本質的すぎて人生のあらゆる場面で応用が効く。だからこそ、実践しがいがあり、価値がある情報なのだ。
イシューからはじめよをまとめると以下のようになる。
- 生産性はアウトプット➗インプットである
- バリューの高い仕事はごく一部である
- イシュー度✖︎解の深さがバリューを決める
- イシュー度からアプローチするべきだ
冒頭の数十ページに語られているこの4つが本書の全てだと言ってもいい。後半は具体的な手法だ。ここを最大限理解することでこの本のポテンシャルを活かすことができる。
そもそも、生産性とは、「成果➗投下した労力や時間」である。つまり、より少ないインプットによってより多くのアウトプットが生まれることが生産性を向上させるということだ。
生産性=成果(アウトプット) / 投下した労力や時間(インプット)
では、多くのアウトプットが生まれるようにするにはどうしたら良いのか。
多くのアウトプットが生まれる仕事を「バリューの高い仕事」と表すことができる。
結論から言うと、バリューの高さは「イシュー度✖︎解の深さ」で表すことが可能だ。イシュー度とは、課題の妥当性つまり、たくさんあるやることの中でも達成した時のインパクトが大きいものかどうかということだ。返って、解の深さとはその解決策を実行したとしてどれだけ課題が解決されるかということだ。
バリューの高さ=イシュー度(解決すべきか)✖︎解の深さ(どれくらい課題が解決されるか)
課題に取り掛かる際に、絶対「犬の道」を進んではいけない。
「犬の道」とは、多くの人が辿る課題解決のプロセスだ。まず、目の前の雑多な課題に対して、解を深めることからはじめるアプローチだ。
これは一般に優れた解決法に見えるかもしれない。たくさんの施策が講じられ効果があるように見えるからだ。しかしながら、このプロセスの場合、バリューの高い仕事は、1%程度だろう。
結局は成果のほとんどがその1%の仕事が出している成果だということが後になってわかるだろう。
そんな皆さんに、このようなプロセスをおすすめしたい。まず初めに、イシューの見極めを行い、ごく少数の課題を取り扱う。次に、解を徹底的に磨き込む。
こうすることで最短経路で「バリューの高い仕事」にたどり着くことが可能だ。
またこうしたプロセスの具体的な手法としては、以下のような手順を辿る
- イシュードリブン=課題を見極める
- 仮説ドリブン=課題を砕き、ストーリーを作る
- アウトプットドリブン=徹底的に検証する
- メッセージドリブン=論拠と構造に基づき報告する
つまりは、見極めた課題に対して、それが解決される前提でストーリーを設計し、解決されるまで検証し、それを成果として効果的に伝えるということだ。
この4つの手法に関しては後で詳しく論じていきたい。
手法を学ぶ前に、筆者について触れておきたい。
筆者の紹介
筆者は、安宅和人という方だ。
マッキンゼー・カンパニーで働いたのちに、イェール大学で脳神経科学のPhDを取得し、現在はヤフー株式会社のCOO室室長を務めている。
イシュードリブン
イシュードリブンとは、「正しくイシューを見極める」手法のことである。平たく言えば、数ある問題の中から取り掛かる課題は何か発見する方法だ。
仮説を立てる
いわゆる「スタンスを取る」ことが重要だ。例えば、「ブログの広告収益を増加させるためには」というのは設問に過ぎない。「ブログの広告収益を増加させるには転職系のアフィリエイト広告を運用するべきか」という仮説にまで落とし込むことで設問はイシューになり得る。
また、言葉にすることが必要だ。図やイメージで伝わることも多いが、文字化することで全ての人に正しく伝えることができる。たいてい、図式化しようとしてもうまくできないことの方が多い。それは、図式化するほど頭の中で整理しきれていないからに他ならない。
よいイシューの条件
以下の3つが良いイシューであるための条件である。
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
本質的な選択肢とは、「今後の方向性」に大きな影響のあるということだ。本質的なイシューはそれが解決されることによって周りの問題は前提が変わってしまう。
深い仮説とは、常識を覆したり、新しい構造で説明できるもののことをいう。もし、この仮説が立証されれば、根本的に変わってしまうほどの仮説であるということだ。
答えを出せるとは、検証する方法があったり、物理的に可能なものだ。世の中には、どうしても答えを出せない問題がある。それに対して時間を割いていても成果は生まれない。
イシュー特定のための情報収集
イシューを見極めるのに、自分の発想に頼るのもいいが、それでは上司に適当だと言われるだろう。イシューを特定するための情報収集にはコツがいる。
- 一次情報に触れる
世に溢れている情報の大半が2次、3次情報だ。実際に現場を見に行ったり、専門家に話を聞きに行くと良い。普通思い付かないようなことを思いつくきっかけになる。
- 基本情報をスキャンする
漏れなくダブりなく、その問題に関わる大抵のことをざっと知っておく。感覚的に選別せずに、大枠の情報を取り入れる。
- 集め過ぎない、知り過ぎない
知識と創造性は、ある一定までは正の相関を持つが、ある一定を超えると負の相関を持つ。つまり、ある程度知っているがそんなに知らないという状態が一番創造性豊かなのだ。
イシュー特定の5つのアプローチ
これまでの方法を試して、イシューが定まらなければ、これまでのプロセスを繰り返すだけなのだが、以下のアプローチを試すと良い。
- 変数を削る
- 視覚化する
- 最終形から辿る
- 「So What?」を繰り返す
- 極端な事例を考える
いかがだろうか。イシューの見つけ方を理解してきただろうか。
仮説ドリブン
イシューが見つかれば、それを分解し、解決するストーリーに載せていく。イシューを見極めた後は、「解の質」を高めていくのだが、それが「ストーリーライン」と「絵コンテ」だ。
イシューを分解し、ストーリーラインに組み立てる
意味のあるイシューの分解とは、MECE(ミーシー)でつまり「漏れなくダブりなく」分解することが重要だが、それだけでなく、意味のある本質的な固まりまで分解することが重要である。大体、物事には型(フレームワーク)があるのでそれに沿って分解すると良い。
分解した上でそれぞれのサブイシューに対して仮説を立てる。
ここまでいけば後はストーリーに載せることだ。プレゼンテーションまたは論文上で必要な要素を踏まえて箇条書きに起こしていく。
ストーリーにする際、2つのありふれた方法がある。「Whyを書き連ねる方法」「空・雨・傘」だ。
前者は、最終的に言いたいメッセージに対して、根拠を連ねる形だ。後者は、「空が暗い、雨が降りそうだから、傘を持って行こう」のように全体の描写、それを見た予測、解決策というように持っていく。
ストーリーを絵コンテにする
絵コンテとは分析のイメージ作りのことだ。絵コンテを作成することにより、何をどれくらい調べなければいけないかが想像できるようになる。
流れとしては、軸を整理し、イメージを具体化、方法を明示する。
縦軸、横軸といった比較手法を明らかにし、数字や表現によって図の持つ意味を具体化し、調査手法を明示する絵コンテを作成することによっておおよそのアウトプットは見える。
アウトプットドリブン
イシューを見極め、ストーリーラインが決まれば、ようやくアウトプットに取り掛かることができる。検証のフェーズだ。
実際の分析を進める
アウトプットを生み出すということは、確実に根拠となるサブイシューに対して答えを出すことである。また、答えあり気で情報を集めることではない。本質的に正しい答えを探し出すことだ。
ここで2つのトラブルに対して対応する必要がある。1つは欲しい数字や証明が出ないことだ。これは、多面的・多角的なアプローチが必要となる。2つ目は自分の知識や技では埒が明かないということだ。これは、他人の力を借りる必要がある。
最後に、軽快に答えを出そう。一つのやり方に固執して止まってはいけない。また、回転数とスピードにこだわろう。
メッセージドリブン
最後に考えてきたものをどう伝え、どうまとめるかが重要である。これこそメッセージドリブンな考え方である。
伝えるものをまとめる
「本質的に」かつ「シンプルに」まとめ上げる。意味のある課題を扱っていることを理解してもらい、最終的なメッセージを理解してもらい、実際に行動に起こしてもらう。これこそがこのフェーズでの目的である。
まず、論理構造が破綻していないかなどストーリーラインの徹底的な磨き込みを行う。
そして、チャートを磨き込む。メッセージに対して適したコメントがあるかどうかなど確認する。
学びと所感
「イシューからはじめる」アプローチは、仕事だけではなく人生のあらゆる場面で活用が可能だと感じる。
受験勉強でとりあえず単語の勉強をしようと行動するか、そもそも受験方式は何にしようか検討するか、どちらのアプローチを取るかによって結果も過程も全く違ったものになるだろう。もしかしたら、苦手な歴史は勉強しなくてよい教科かもしれない。
よりイシュー度の高いものから扱っていったら我々の人生はどれほど豊かになるのでしょう。想像すると気持ちが高揚する。
この本、後半はより実践的なビジネス上での指南書となっているが、冒頭の数十ページには人生の教科書とも言えることが書かれている。
最重要の事柄を最初に持ってくる。これもイシューからはじめた結果なのかもしれない。
まとめ
「イシューからはじめよ」とは
- 生産性はアウトプット➗インプットである
- バリューの高い仕事はごく一部である
- イシュー度✖︎解の深さがバリューを決める
- イシュー度からアプローチするべきだ
ということを論じていて、
- イシュードリブン=課題を見極める
- 仮説ドリブン=課題を砕き、ストーリーを作る
- アウトプットドリブン=徹底的に検証する
- メッセージドリブン=論拠と構造に基づき報告する
4つの手法によって、表現されるということがわかった。
イシューを見極め、解の質を高めるというアプローチを人生の至る所で活かせるのではないだろうか。